近年のゲーム専門店は非常に厳しい経営状態が続いています。
ゲームソフト一本あたりの利益は非常に低いからです。
現在のゲームソフトの仕入れ値は定価の75%前後です。
ソフトの定価が6800円だとすると、仕入れ値は5100円。
ソフトを定価で販売することはまずなく、店頭では10〜15%程度の割引で販売されているのが普通です。
つまり販売価格は6120円で、そこから仕入れ値を引いた1本あたりの利益は1020円です。
ユーザーの需要を完全に読みきり、適正な仕入れが行えればこれでやっていけなくもないかもしれませんが、
現実的にはそんなことはまず不可能です。
ソフトによっては、どうしても在庫がでてしまうことは仕方がないでしょう。
仮に5本ソフトを仕入れて1本売れ残った場合、
4本分の販売利益は4080円。
在庫1本分の損失が5100円。
結果として1020円の赤字となります。
たった一本需要を読み違えただけで赤字の危険性があるのです。
こんな状況では、ゲームショップの経営が苦しいのは当然です。
しかも日本のゲーム市場では、小売はソフトが売れ残ったからといってソフトメーカーに返品などはできません。
(海外は小売の力が強く、返品やプライスプロテクションといった制度があります)
在庫過多による損失は全て小売自身が被るのです。
家電量販店などでもゲームソフトを取り扱っていますが、利益はほぼトントンないし赤字で販売している場合もあります。
ゲームソフトは客寄せと割り切って、利益率の高い家電製品の販売を重視するのです。
ゲームだけで利益をださなければいけない専門店では、もちろんこんな行為はできません。
ネット通販が普及してきたことも、ゲーム専門店にとっては大きな痛手です。
特にamazonでは、新品ゲームソフトが発売日で24%引き(しかも送料無料)といったものすごい値引きを行っている場合もあり、
専門店ではとても太刀打ちできない価格です。
ゲーム専門店が大手量販店に勝っている唯一の点は、フライング販売を行っている場合があるということです。
フライング販売とは、正規の発売日の前日(場合によっては前々日も)に消費者へ販売することを言います。
(消費者側はフライングゲット、略してフラゲと言います)
ゲーム関連商品のフライング販売はご法度であり、ソフトメーカーに知られてしまった場合は、
最悪以後の取引を停止されてしまう恐れもあります。
家電量販店でフライング販売を行うことは100%あり得ませんが、
一部のゲームショップではこのフライング販売が行われています。
もちろん、家電量販店よりも高い値段設定なのですが、
少しでも早く遊びたいユーザーにとって、フラゲは非常に魅力的です。
こういう、ルールを破った販売形態を取らなければやっていけないという専門店の事情はお察しします。
実は、昔はゲームソフト一本あたりの利益率はもっと高かったのです。
スーパーファミコンのソフトは定価が1万円程度でしたが、問屋の仕入れ値は55%でした。
小売の仕入れ値だと60%程度でしょう。
小売が2割引でソフトを販売していると仮定し、この場合で5本ソフトを仕入れて1本売れ残ったとすると、
4本分の販売利益は8000円。
在庫1本分の損失が6000円。
結果は2000円の黒字となりました。
かなり値引きを行ったうえで在庫が発生しても、充分黒字が期待できていたのです。
プレイステーションのソフトは定価5800円程度でした。
仕入れ値は75%ですから、一本当たりの利益は1450円です(初期のプレイステーションソフトは値引きが許可されていませんでした)。
定価で販売しても、スーパーファミコン時代よりも利益は減っていたのです。
確かに、ユーザーにとってみればソフトは安い方が良いというのは当然ですが、
ある程度は小売側にも利益がなければ、結果的にユーザーにとってもデメリットとなってしまうのではないでしょうか。
個人的なことで恐縮ですが、1994年当時には筆者の近所(自転車で10分以内)には8件のゲームショップがありました。
しかし、2004年までにその全ての店舗が閉店してしまいました。
これがプレイステーションの台頭によるものなのか、
それとも単なる時代の流れによるものなのかはわかりません。
確実に言えることは、現在筆者がゲームを買う場合は、
自転車で30分程度はかかる遠方へ行かなければならなくなったということです。
昔は良かったなぁ…。
閑話休題
果たして、ゲーム専門店はこの先生き残ることはできるのでしょうか?
正直なところ、「無理」としか言えません。
筆者はどう考えても、ゲーム専門店の明るい未来が見えません。
まあゲームに限らず、世の中のほとんどの専門店は苦しいご時世であることは疑いようのない事実ですが。
誰かゲーム専門店が繁盛する方法を知っていたら、お店に教えてあげて下さい…。
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