インターネット接続環境を標準搭載した事実上初めてのゲーム機は、1998年に発売されたドリームキャストでした。
(実際はピピン@ですが、これは世界全体で42000台しか売れなかった大失敗ゲーム機ですから考慮しなくても良いでしょう)
ドリームキャストは現在のネット時代を先取りした素晴らしいハードでした。
しかし、当時はまだダイヤルアップが主流で、接続時間に応じてネット利用料金が増える仕組みでしたから、
現在のように気軽にネットを利用することは困難でした。
ドリームキャストは生まれてくるのが10年早かったと揶揄されたものです。
それから13年、現在のゲームハードはどれも気軽にインターネットに接続することができます。
iPodの登場によって、音楽CDの販売数が激減し、ダウンロード販売が主流になったように、
今後はゲーム業界でもダウンロードソフトはどんどん増加して行くでしょう。
いずれはパッケージソフトは消滅して、 全てのゲームがダウンロード専売になる時代は来るのでしょうか?
将来のダウンロードゲーム事情を予想してみましょう。
最初に、ダウンロードソフトのメリットを考えてみましょう。
・まずは、ソフトが安く買えるという点が上げられます。
パッケージソフトは、ディスクないしROMの製造コスト、説明書やパッケージ代、
小売や流通の取り分が必要になります。
その点、ダウンロードならばそのような諸経費は掛からないわけですから、(サーバー維持費は発生しますが)
価格は安く設定できます。
・小規模ソフトを販売しやすいのも利点です。
今時パズルゲームなどを4800円とかで販売するというのは難しいです。
ダウンロードソフトならば数百円から販売できますから、
"面白いんだけどボリュームはいまひとつ"といったゲームにも光明が見えます。
・データの販売になるので、当然売り切れの心配はありません。
マイナータイトルでも購入しやすくなるのは嬉しい限りです。
・真夜中だろうと大雨の日だろうと、一歩も外に出ないで購入できるのはラクチンです。
近所にゲーム取り扱い店がない地域に住む人でも安心です。
・ゲーム機本体に複数のゲームを保持できるので、ソフトの入れ替えをしなくて済むのはすごく便利です。
正直、この機能はパッケージソフトでも実現できそうですが…。
・かさばるパッケージがなくなるのは、部屋が狭い人にとっては嬉しいことかもしれませんが、
形に残らない点を嫌うコレクターもいるでしょうから、一長一短といったところでしょう。
まあメリットと言えるのはこれぐらいでしょうか。
では反対にデメリットについても考えてみましょう。
・実際ダウンロードソフトはそれほど安くないという意見もあります。
ダウンロードソフトは定価自体は安いのですが、
基本的に定価販売で、特別なことがない限り値引きはされません。
その点、パッケージソフトは店の値引き率によって相当安く買える場合もありますし、
中古ソフトならば更に安く手に入れることもできます。
ソフトに飽きたら売却して、次のソフトの購入資金にすることもできます。
総合的に見て、ダウンロードソフトは決して安いとは言えないのではないでしょうか。
・ダウンロードに時間がかかる懸念もあります。
音楽CDと違って、最近のゲームソフトは数ギガ(ソフトによっては数十ギガ)バイトの容量がありますから、
ダウンロードに何時間もかかってしまうこともあります。
人気ソフトだと、一度に大勢のユーザーがアクセスすることで、 サーバーがダウンしてしまう恐れもあります。
結果、発売日にゲームが遊べないといった事態も考えられます。
・メーカーはいつまでダウンロード体制を整えてくれるのかも気になります。
パッケージソフトならば、大昔のソフトでも購入は可能です。
レトロゲームショップに行けば、今でもファミコン(1983年発売)の名作ソフトが手に入ります。
ダウンロードソフトは、30年近く経っても購入できるのでしょうか?
バーチャルコンソールなどで旧作ゲームのダウンロード販売も行われていますが、
全てのゲームを網羅しているわけではありません。
ダウンロード専売では、一度買い逃したら二度と遊べなくなる危険性があります。
・ソフトメーカーがますますダウンロードコンテンツに力を入れようとするでしょう。
ほとんど未完成のような状態でソフトをリリースし、
「続きは課金で」という最悪な売り方をするメーカーが出てくるかもしれません。
・バグチェックもいい加減になると思われます。
「何か問題が見つかったらパッチを当てて修正するから、ユーザーのみんなは頑張ってデバッグしてね」
というどうしようもないメーカーもでてくるでしょう。
(というか、一部のメーカーは現時点でもそうなっているのだから、何とも嘆かわしいことです)
・能動的にゲームを探さなければいけない点も気掛かりです。
特に、任天堂ソフトの購入者は普段あまりゲームをしないライトユーザーが多くいます。
ライトユーザーは、自分からゲーム雑誌を見たり、
メーカー公式ホームページを見て情報を仕入れるという行為はまずしてくれません。
家電量販店に立ち寄った際に、ふらっとゲームの棚を見て回るぐらいでしょう。
そういう人たちに、自らゲーム機をネットに繋いでソフトを探してもらうというのは至難の業です。
・ダウンロード販売はお店に利益がありません。
ダウンロード販売が主流になることで、小売の淘汰がますます進んでしまうことでしょう。
ゲーム業界が縮小している現在、世の中の小売店が減少することは絶対に避けたいことです。
厳密に言えば、ダウンロード用のプリペイドカードを販売することで、小売も若干の利益が得られるようですが、
パッケージソフトに代わる収入源にはとてもならないでしょう。
・ダウンロード購入のためには個人情報の入力が必要な場合もあり、 それが流出する危険性もあります。
現に、ソニーが運営するプレイステーションネットワークはシステムへの不正侵入をされたことで、
7700万人(グループ全体では1億人以上)もの個人情報が流出してしまいました。
任天堂は安全面を考慮してか、ダウンロードコンテンツの利用に際して、個人情報の登録は一切必要ありません。
しかし、それはまたシステムの利便性を失うことでもあり、どちらが良いかというのは一概には決められないかもしれません。
ただ、ダウンロード販売におけるひとつの課題であることは間違いないでしょう。
以上の点を考慮すると、ダウンロード専売はデメリットがかなり大きいと思われます。
実際、ダウンロード専売を実践したPSPgoは世紀の大失敗に終わりました。
(まあPSPgoはダウンロード専売ということ以外にも山ほど問題点があったので、一概には判断できませんが)
何より、ゲーム機のネット接続率はかなり低いのです。
2010年の調査では、日本でパソコン等でインターネットを利用している人は9400万人(人口の78%)もいますが、
ことゲームに関しては、ネット接続率が DS=15%・PSP=28%・Wii=31%・PS3=41%・Xbox360=43%と、
全てのゲーム機が半分にも満たない接続率なのです。
普及台数が多いハード(ライトユーザーが多い)ほど接続率が下がるのはまあ当然ですが、
ユーザーの大半がゲームマニアと思われるXbox360ですら50%以下なのには驚きです。
正直、Xbox360はネット接続しないと魅力が激減すると思うのですが…。
また、日本ではほとんどの地域にブロードバンドが開通してきていますが、
海外ではまだまだ設備が整っていない国もたくさんあります。
こんな状況では全てのゲームをダウンロード専売なんてとてもできないと思います。
少なくとも、後10年はパッケージソフトはなくなることはないでしょう。
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