ゲーム業界が衰退している理由、
2つ目は、トップハードでソフトを発売しなかったことです。
従来のゲーム機戦争では、強者は常に一つで、残りは全て失敗という、
いわゆる一強皆弱の情勢となるのが通例でした。
(唯一、アメリカでのメガドライブがスーパーファミコンに肉薄していたことはありますが)
ところが、今世代は少し事情が違います。
現行3機種の世界累計販売台数は、
マイクロソフトのXbox360が7000万台(2012年10月時点)
ソニーのプレイステーション3が6390万台(2012年3月末)、
任天堂のWiiが9656万台(2012年6月末)と、
Wiiが頭一つ抜きん出ているものの、圧倒的な一強体制には至っていません。
ちなみに、前世代の世界累計販売台数は、
ドリームキャストが913万台、
プレイステーション2が1億5440万台、
ゲームキューブが2174万台、
Xboxが2400万台と、
プレイステーション2が圧倒的な勝者となっていました。
今世代のように、二番手三番手のハードでも一定の市場を築けているというのは、非常に珍しいことです。
このような情勢になった理由は、多くのサードパーティーがWiiを無視し、
プレイステーション3(海外ではXbox360も)に主力タイトルを投入したことが挙げられます。
前世代機プレイステーション2は、世界中で圧倒的な普及を見せていました。
当然多くのメーカーは、その後継機プレイステーション3の勝利を信じて疑いませんでした。
現にプレイステーション3は、ハード発売前から、ファイナルファンタジー13やバイオハザード5、
メタルギアソリッド4といったビッグタイトルの発売が発表されていました。
これでは、ほとんどのメーカーがプレイステーション3に注力しようと考えるのは当然でしょう。
しかし、プレイステーション3の価格発表がされた瞬間に、その流れは一変しました。
62790円(その後、発売前に異例の1万円値下げが行われましたが)というあまりにも高い値段は、
サードパーティーを絶望させました。
当然ながら、この高価格では販売が振るうはずもなく、
プレイステーション3は、立ち上げから大きくつまずいてしまったのでした。
しかし、既に巨額の開発費を投じてプレイステーション3ソフトの開発に着手していたメーカーは、
今更中止することもできず、そのまま開発を続けざるを得なかったのです。
逆に、Wiiはほとんどのメーカーから期待されていませんでした。
前世代機であるゲームキューブは、プレイステーション2の足元にも及ばず終わりましたから、
その後継機Wiiが大きく普及するとは考えていなかったのです。
そんな中、任天堂は開発費が年々増大する状況に警鐘を鳴らしていました。
そこで、Wii(やDS)はグラフィックを重視せずに性能を抑え、
直感的な操作のWiiリモコン(や二画面タッチパネル)による、アイデアで勝負する方向へ舵を切ったのです。
WiiスポーツやWiiFit(や脳トレ)などは、グラフィックは全然たいしたことはありませんが、
今まであまりゲームに触れてこなかった層へのアピールに成功し、多くの新規ユーザーを獲得しました。
その結果、Wiiはプレイステーション3(やXbox360)を上回る普及を見せ、
一躍トップハードへ上り詰めたのです。
しかし、Wiiはほとんど任天堂一社で市場を盛り上げたようなものであり、
多くのサードパーティーはWiiに主力タイトルを投入しませんでした。
ほとんどのサードパーティーは魅力的なゲームを開発するためのアイデアがなく、
グラフィックに注力することでしか勝負ができないのです。
それ故に、グラフィックが劣るWiiでの展開を好まなかったのです。
結果、勢いよく普及を見せるWiiを放置して、
普及が進まないプレイステーション3(やXbox360)にソフトを投入することになったのです。
過去のゲーム機戦争において、非トップハード…いわゆる負けハードに、
多数のサードパーティーが注力した事例はありません。
今世代に圧倒的なトップハードが存在しないのもそういった理由からです。
しかし、結局プレイステーション3(やXbox360)はWiiの牙城を崩すには至りませんでした。
ただでさえソフト開発費が増大していることが問題になっている状況で、
市場の小さな負けハードで展開するというのは、あまりにも愚かな行為です。
開発費が高騰している現状では、圧倒的な勝ちハードに全力を投入しなければいけなかったのです。
このトップハードを無視したソフト展開が、市場の衰退に繋がったのです。
プレイステーション3の勝ちを信じて疑わなかったメーカーが、もう少し慎重な行動をしていれば…、
あるいは、グラフィックに注力しすぎず、アイデアを重視したゲーム開発ができていれば…、
現在のゲーム市場は、ここまで縮小していなかったのかもしれません。
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