ファミリーコンピュータディスクシステム(以下ディスクシステム)とは、
任天堂が発売したファミリーコンピュータ用周辺機器。
1986年2月21日に15,000円で発売されました。
ファミリーコンピュータは、日本以外でも、アメリカ・カナダ・オーストラリア等で販売されていましたが、
ディスクシステムは日本国内でのみの販売となりました。
ディスクシステムの一番の特徴は、ソフトが専用のディスクカードで提供されていたことです。
見た目はフロッピーディスクに酷似していますが、
フロッピーディスクよりも安いクイックディスクという規格を元に作られた独自ディスクです。
ディスクカードには、様々なメリットがありました。
まず、容量が大きくなったことが挙げられます。
ディスクカードの容量は両面合わせて112キロバイトで、当時のファミコンROMカセットの約3倍の容量がありました。
ディスクカードは、カセットテープのようにA面/B面の2つのデータ領域があり、
容量の小さいソフトはA/B面でそれぞれ別々のゲームが遊べましたし、
一つのソフトでA/B両面を使うことで、容量の大きいゲームにも対応ができたのです。
更にセーブ機能の搭載により、次回再開した際に続きから遊ぶこともできたのです。
今の世代の人には信じられないことかもしれませんが、
当時のファミコンソフトにはプレイデータを記録するセーブの仕組みは存在しませんでした。
せいぜい、パスワード入力による疑似セーブぐらいしか対応策がなかったのです。
ですから、時間の掛かるゲームのクリアは非常に困難だったのです。
そして何よりも、ディスクカード最大のメリットは書き換え機能です。
ディスクカードは、店頭に設置されていた「ディスクライター」という書き換え装置を使う事で、
内容を別のゲームに書き換えることができました。
(あくまで書き換えなので、書き換え前のソフトは遊べなくなります)
ソフトをパッケージで購入する場合は2500円程度かかりますが、
書き換えの料金は1タイトル500円と非常に安価だったので、
子供達の少ないお小遣いでも色々なゲームが遊べると評判になりました。
(ただし、空のディスクというものは存在せず、最初の1本については2500円程度で購入しなければいけませんでした)
しかも、ほとんど全てのゲームが書き換えに対応していたので、たとえ新作ソフトであっても500円で遊べたのです。
当時の任天堂は、ファミコンの性能に限界を感じ始めていたので、
「今後の任天堂ソフトは全てディスクシステムに提供する」と発言する程にディスクシステムに注力する予定でした。
しかし、実際にはそうはなりませんでした。
ディスクシステムはある程度の普及には成功したものの、爆発的な普及とまではいかなかったからです。
普及に至らなかった原因は、色々ありました。
ディスクシステムを発売してすぐ、
ディスクカードを上回る128キロバイトの容量を持ったファミコンROMカートリッジが登場したため、
容量が大きいというメリットは、あっという間になくなってしまいました。
(ディスクカードはファミコンROMカートリッジと違い、容量拡大は不可能な仕様です)
セーブ機能についても、1987年にはバッテリーバックアップ機能を搭載したROMカートリッジが登場したことで、
ファミコンソフトでもデータのセーブが可能となりました。
また、サードパーティーがディスクシステムに消極的だったことも痛手でした。
特に、ファミコン初期を支えたサードパーティーであるハドソンやナムコは、一応ディスクシステムに参入していたものの、
発売したタイトルはファミコンからの移植ソフトのみで、新規タイトルは一本も発売しなかったのです。
ユーザーにとっては500円での書き換えは非常に魅力的ですが、
ソフトメーカーにしてみれば利益率が大きく減少するのですから、消極的になるのも当然です。
(当時のファミコンソフトの価格は4800円程度)
このようなことは少し考えればわかりそうなものですが、何故任天堂はこんな愚作とも言える値段設定を行ったのか…。
更に、ディスクカードの脆弱性も問題でした。
最近のゲームソフトでも、何らかの原因でセーブデータが消えてしまうということはまれにありますが、
ディスクカードはセーブデータどころかゲームそのもののデータが消えてしまう危険性があり、
消えてしまった場合は2度とそのゲームが遊べなくなってしまうのです。
ディスクカードは磁気ディスクですから、磁石に近づけるのは厳禁ですし、
埃や汚れ、振動、衝撃によってゲームが消えてしまうことは珍しくありませんでした。
いくらソフトの書き換え価格が安いと言っても、ゲームそのものが壊れてしまうのではどうしようもありません。
このように、ディスクシステムは多くの問題点を抱えていたのでした。
だからこそ、日本以外の国では販売されなかったのでしょう。
しかし、国内だけでも約450万台の売上げを記録しており、
この数字は大成功ではないにせよ、周辺機器としては充分成功したと言えるのではないでしょうか。
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