1990年当時、ゲームセンターが新しいゲームを設置するには、ゲーム基盤ごとの交換が必要であり、
その基盤も、15〜20万円と非常に高価だったことは、経営者には悩みの種でした。
そんな中、SNKが発売した業務用NEOGEO (Multi Video System=MVS)は、
本体+ロムカセットの形式で提供されており、
ロムカセットを交換するだけで新しいゲームが遊べるという、いわゆるファミコン等と同じ仕組みでした。
ロムカセットも1本あたり3万円程度と、非常に安価で販売されたので、店舗からの人気も高かったのです。
しかも、1台の本体に最大6本のソフトを導入できるシステムだったので、
低コストかつ省スペースを実現した夢のマシンでした。
店舗向けの無料レンタルも行っており、スーパーや駄菓子店の軒先にも設置されるなど、
普及はゲームセンターだけに留まりません。
当時のストリートファイター2から始まった格闘ゲームブームも、普及に拍車をかけました。
SNKは "餓狼伝説" "竜虎の拳" "サムライスピリッツ" "THE KING
OF FIGHTERS"
等の格闘ゲームを次々と発売し、NEOGEOの名を世に知らしめていったのです。
また、ソフト容量を表す"100メガショック"というキャッチコピーはインパクト抜群でした。
当時の家庭用ゲーム機の主流だったスーパーファミコンのソフトは4〜8メガ程度がほとんどだった中、
NEOGEOの100メガという大容量は、ゲームファンを興奮させました。
余談ではありますが、当時の容量表記はメガバイトではなく、メガビット(1バイト=8ビット)であり、
つまりは100メガビット=12.5メガバイトです。
〔参考例 : CD1枚=約700メガバイト DVD1枚=約4700〜9400メガバイト〕
この事実を、後年になって知った筆者は非常に悲しかったです………。
1991年、業務用NEOGEOと平行して、
家庭用NEOGEO (Advanced Entertainment System=AES)も発売されました。
本体価格は58000円。
コンセプトは"アーケード(業務用)とコンシューマー(家庭用)のリンク"というものでした。
当時の家庭用ゲーム機というのは、ハードの性能がそれほど高くはなく、
高性能なアーケードゲームから家庭用ゲーム機への移植は、不完全なものにならざるを得ませんでした。
それに対して、NEOGEOはアーケードと家庭用のロムカセットの中身は、
事実上全く一緒であり、文字通りの完全再現を実現していたのです。
この、アーケードゲームがそのままのクオリティで家庭でも遊べるという点は非常に魅力的で、
ゲームマニアからは絶賛されました。
付属のコントローラが、業務用と同じスティック型だった点も、 格闘ゲームファンには嬉しい仕様です。
また、ソフトに大容量のロムを使用していたため、カセットが弁当箱並の大きさと重さになっていることで、
凶器として使えると、しばしばネタにされることもあります。
<ソフトの大きさ比較>
いかにNEOGEOソフトが大きいかがおわかりいただけるでしょうか。
これだけサイズ差がありながら、容量は3DSソフトの方が20倍以上大きい〔683メガビット:2ギガバイト〕のですから、
技術の進歩とはすごいものです。
ちなみに、NEOGEO発売の3年後である1994年には、セガサターンやプレイステーションが発売され、
NEOGEOのタイトルがいくつも移植されることになりましたが、そのどれもが完全移植とはいきませんでした。
キャラクターのアニメーションを減らしたり、拡張RAMカートリッジを使用する等の措置を行い、
やっと移植ができたという状態でした。
もちろん、NEOGEOの総合的なハード性能はセガサターンやプレイステーションには及びませんが、
こと2D描写能力に関しては、それらを凌駕している程に高性能だったのです。
しかしながら、NEOGEOには、ソフトが高価であるという最大の欠点がありました。
当時の家庭用ゲームソフトの一般的な価格は、数千円〜1万円程度でしたが、
初期のNEOGEOはソフト1本で約2万円と、かなり高めの価格です。
ソフト価格は年々上昇し、最終的には1本39800円というとてつもない価格にまでなりました。
高価格になってしまった原因は、当時のロムが非常に高価だったこと、
それに加えて、製造拠点の確保がうまくいかなかったことです。
これだけ高価であったにもかかわらず、
NEOGEO本体は累計100万台ものセールスを記録したとされており、この結果は大成功と言って良いでしょう。
ところで、NEOGEOが一般販売される以前に、
レンタルビデオ店等でレンタル事業を行っていたことは、あまり知られていない事実です。
2泊3日でハードが1000〜1500円、カセットが一本500円で、レンタルを行っていました。
実はこれが、日本初のTVゲームレンタル事業なのです。
しかし、ゲームとレンタルの相性はあまり良いとは言えず、
一般的な認知もほとんどないまま、1994年に終了しました。
一定の成功を収めたNEOGEOではありましたが、やはりその値段の高さから、
一部のお金持ちのゲームマニア以外には普及していませんでした。
そんな状況を打開すべく、1994年、SNKは家庭用新ハード"NEOGEO CD"を発売しました。
コントローラはNEOGEOから変更され、ファミコン等と同じパッド型コントローラを採用し、
アーケードに不慣れな一般層の獲得を目指しました。
ちなみに、NEOGEOとNEOGEO CDのコントローラには相互互換があるので、
NEOGEO CD本体にNEOGEOコントローラを接続(またはその逆)することもできました。
しかし最大の特徴は、ソフト媒体を安価に供給できるCDロムにしたことです。
ソフト価格は1本6〜7000円程度と、数万円したロムカセットとは雲泥の差です。
もちろん、安くてもソフトの中身は同じなので心配いりません。
ソフト価格が高いという欠点を見事に克服したNEOGEO CDでしたが、
ロード時間がものすごく長いという別の欠点を抱えていました。
CDドライブが等速読み込み(サターンやPSは2倍速読み込み)だったことや、
ロード時間短縮を考慮したプログラミングがなされていなかったことが原因です。
そのため、ゲーム途中で数分間も(しかも何度も)待たされるソフトもあり、
特に格闘ゲームでは"プレイしている時間より猿のお手玉*を見ている時間の方が長い"
と酷評されることもありました。
この欠点により、ライトユーザーへの普及という期待は脆くも崩れ去ってしまいました。
*ロード時間中に画面に表示されるアニメーション
長いロード時間を待つ苛立ちを少しでも紛らわせようという意図でしょう。
1996年には、ドライブ読み込みを2倍速に改良した"NEOGEO CD-Z"も発売されました。
しかし、それでもロード時間が長いという欠点は改善されたとは言い難く、普及にはいたらなかったのです。
結局、1999年を最後に、NEOGEO CDへのソフト供給は打ち切られることになりました。
それに対して、NEOGEO(AES)は2004年までソフトが発売される長寿ハードとなりました。
2000年頃から、2D格闘ゲーム市場に陰りが見え始めます。
格闘ゲームファンの要望に応えていくにつれ、ゲームシステムは複雑化の一途を辿り、
新規ユーザーお断りといわんばかりの空気ができあがってしまっていたことが原因と思われます。
SNKの格闘ゲーム一辺倒だった企画体制が災いし、徐々に経営が悪化。
2001年10月30日、ついに倒産となりました。
倒産後、SNK関係の権利は、プレイモア社(現SNKプレイモア)に引き継がれています。
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