前回、ドラゴンクエストの容量削減のための工夫について記述しました。
今回は、スーパーマリオブラザーズの容量削減の工夫について解説します。
1985年に発売されたファミコンのスーパーマリオブラザーズは、
わずか40キロバイトの容量しかありませんでした。
この携帯電話の待ちうけ画像1枚分程度の容量でゲームが作られていたのは、驚くしかありません。
この少ない容量を実現するために、一体どのような工夫がなされていたのでしょうか？
まずは、グラフィックの流用についてです。
主人公マリオと、その弟ルイージ（2Pキャラ）が色違いなのは、誰でも気付くところでしょう。
しかし、流用部分はそれだけではありません。
実は背景の草と雲は、色が違うだけで同じ形をしています。
草と雲という全然違うものを使いまわしているというのは、
何とも面白い工夫であると感じます。
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スーパーマリオブラザーズ（C）Nintendo
また、ファイアマリオの投げるファイアボールは、
ステージギミック（敵）であるファイアバーと同じです。
これは比較的気付きやすい使いまわしでしょうか。
スーパーマリオブラザーズ（C）Nintendo
ちなみに、ファイアバーが棒状ではなく、小さな火の玉が集まっているのも、容量削減に役立っています。
棒が回転している様子を表現するためには、角度の違った画像がいくつも必要になってしまいます。
（ファミコンにはスプライトを回転させる機能がない）
ですが、それを細かな丸の集合にすることで、
自由に角度を設定でき、少ない容量でなめらかな回転が表現できるのです。
そして、ゲーム中にかな・カナは一切使われていません。
スーパーマリオブラザーズ（C）Nintendo
筆者がスーパーマリオを初めて体験したのは小学生の頃でした。
当時は英語なんてさっぱり読めませんでしたから、
キノピオやピーチ姫が何をしゃべっているのか全然わかりませんでした。
ファミコンを遊ぶのは大半が子供なのに、この子供に優しくない仕様はどういうことなんだろうと、
ずっと疑問に感じていました。
しかし、実はこれも容量削減の一環なのです。
アルファベットは全部で26文字。
それに対して、ひらがなは濁音・半濁音を除いても46文字。
実に20種類もの文字が節約できるのです。
1文字あたりの容量なんてわずかなものですが、当時の少ない容量では重要な削減対象です。
（ドラゴンクエストでも、容量削減のためにカタカナは20文字しか使われていません）
これに初めて気付いた時は、長年の疑問が解消されてすがすがしい気分になりました。
ところで、このキノピオの画像にも違和感がありませんか？
マリオは右側を向いているのに、キノピオは正面を向いています。
よく見ると、キノピオは左右対称ですね。
つまり、半分だけ画像を作って、それを複製して左右反転させているのです。
ファミコンのスプライトには左右反転して表示する機能があり、これを利用すれば半分の容量で済むわけです。
こんな何気ない点でも、容量削減の工夫が見られますね。
ちなみに、ファイアフラワー、スーパースターなどのパワーアップアイテムも、左右対称に作られています。
キャラクターのアニメーションにも工夫があります。
マリオが走るアニメーションは3パターンです。
わずか3枚の画ですが、滑らかな動きに見えるのはすごいところです。
では、最も弱い敵キャラクターであるクリボーのアニメーションは何枚あるでしょう？
…実はクリボーは一枚画なのです。
上記の通り、ファミコンのスプライトには左右反転を行える機能が備わっており、
映像を連続で反転させることで、クリボーが歩いているように見せているのです。
これは正に妙技と言えるでしょう。
スーパーマリオブラザーズ（C）Nintendo
ちなみに、クリボーはスーパーマリオブラザーズで一番最後に作られた敵キャラクターです。
当初はノコノコを最初の敵にする予定でしたが、（前身であるマリオブラザーズではそうでした）
それでは少し難しすぎるということで、更に弱い敵の登場が提案されたのです。
しかし、開発も終盤だったため、容量は既に限界、新たな敵を登場させる余裕はほとんどありませんでした。
そんな状況で生まれたのが、この極限まで容量を削減した一枚画のクリボーなのです。
昔のゲームの開発裏話は、何とも興味深いものです。
このように、スーパーマリオでも容量削減のための工夫が随所に見られます。
現在のゲームは、大容量のディスクメディアを採用しており、
ゴージャスなゲーム体験ができるようになったことは喜ばしいことだと思います。
しかし、少ない容量で何とかやりくりしていた時代のゲームは、
クリエイター達の創意工夫が感じられて面白いものですね。
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