デジキューブは、1996年2月6日にスクウェアが設立した会社で、
全国のコンビニエンスストアへ、ゲーム(攻略本やサウンドトラックCDなども)の流通を行っていました。
後に、エニックスやカプコン、ナムコなどの会社も出資しました。
名前の由来は、デジタル+キューブ(スクウェアの立体)。
デジキューブが取り扱った最初の商品がファイナルファンタジー7です。
ファイナルファンタジー7は、初回出荷のほとんどがデジキューブを通して出荷されました。
(初回出荷本数220万本の8割がコンビニ流通分)
これにより、コンビニでなければファイナルファンタジー7が買えないという状況を作り出し、
デジキューブを軌道に乗せたのです。
ファイナルファンタジー7の成功によって、デジキューブも好調な立ち上げを見せましたが、
ファイナルファンタジー7というビッグタイトルがコンビニ主体の販売となったことで、
一般の小売からの反発も大きかったと言われています。
デジキューブは、設立当初こそファイナルファンタジー7や8の大ヒットによって順調に推移していましたが、
その後売上げは落ち始め、経営に陰りが見え始めます。
経営が思わしくなかった理由の一つが、返品制度の導入です。
日本のゲーム業界には返品制度が存在しませんが、唯一、デジキューブでは返品を受け付けていました。
(ただし、これは初回出荷本数をデジキューブ側が設定する場合に限ります)
ソフトによっては大量に返品される場合もあり、デジキューブの収益率は芳しくありませんでした。
また、ソフトはほとんど定価販売だったため、消費者からの"値段が高い"という印象は拭えませんでした。
余談ではありますが、一般的にゲームソフトの利益率は非常に低く、
値引きなどを考慮すると、1本あたりの利益はわずか数百円程度で、
ゲーム取扱店の経営は非常に苦しいと言われています。
(関連リンク:消え行くゲーム専門店)
しかし、コンビニは少し事情が違います。
コンビニの客単価はわずか600円程度(2012年調査)しかありませんので、利益は限りなく少ないのです。
それに比べると、ゲームソフトのように1本で数百円(コンビニはほぼ定価販売ですので千円以上?)
もの利益が得られる商品は、超オイシイ存在と言えるでしょう。
特に痛手だったのは、デジキューブで任天堂のソフトを取り扱えないことでした。
当時の任天堂は、ニンテンドウ64の不振によって辛酸を嘗めていましたが、
それでもまだまだソフト人気は高く、大勢のユーザーを掴んでいました。
しかし、スクウェアは過去にニンテンドウ64を非難する発言をしたことで、
任天堂の山内社長の怒りを買い、以後、スクウェアは任天堂ハードでソフトを発売できなくなりました。
デジキューブとしては、是非とも任天堂のソフトを取り扱いたかったものの、
任天堂は頑なにそれを拒否していました。
そもそも、デジキューブは任天堂の流通(初心会)に対抗して設立された会社ですから、
任天堂がそれを快く思っているはずもありませんでした。
当時の関係者のコメントをいくつか抽出してみます。
・2001年1月 <スクウェア:鈴木尚 社長>
ゲームボーイアドバンス向けにぜひ供給したい。
必要な努力はしている。
・2001年1月 <任天堂:山内溥 社長>
(ゲームボーイアドバンスでソフトを発売したいというスクウェアに対して)
何を言っても自由だが、契約する意思はない。
将来的にも可能性は低い。
・2001年10月 <任天堂:今西絋史 広報室長>
スクウェアさんに関しては、ゲームの認識が違いますので、
よほどのことがない限り一緒にやっていくことはないでしょう。
他のサードパーティーと同じというわけにはいかないですね。
・2001年7月 <デジキューブ株主総会>
株主「土下座してでも任天堂商品を扱えるようにするべきでは?」
デジキューブ染野社長「土下座してなんとかなるものなら、いくらでもしますよ」
といった具合に、当時の任天堂とスクウェア(デジキューブ含む)の関係は最悪だったと言えるでしょう。
結局、市場で大きな力を持っていた任天堂の助力が得られなかったため、
デジキューブはますます経営が悪化していったのです。
ちなみに、2001年12月に和田洋一氏がスクウェア社長に就任、
2002年6月に岩田聡氏が任天堂社長に就任しています。
更にスクウェアは、2003年4月にエニックスと合併、
これらのことから、両社の関係は改善され、現在ではスクウェア(スクウェアエニックス)は、
任天堂ハードにソフトを提供できるようになっています。
また、2001年7月の映画ファイナルファンタジーも問題でした。
この映画は、赤字額でギネス登録された程の大失敗映画です。
この赤字の補填のため、スクウェアはデジキューブの株式の一部を売却、
デジキューブの経営状態は更に悪化していったのです。
経営状態の改善は見られず、2003年11月26日に自己破産を申請。
デジキューブは解散しました。
負債総額は95億円でした。
コンビニによる流通改革というのは中々面白い試みだっただけに、
失敗に終わってしまったのは残念ですね。
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