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テトリス

テトリスといえば、言わずと知れた大ヒットパズルゲームです。
画面上部から落下してくる7種のブロックを、隙間なく積み上げることでブロックを消していくという内容です。
家庭用ゲームとしてはもちろんのこと、アーケードゲームや携帯電話、キーチェーンゲームなど、
様々な機種で発売されています。

特にゲームボーイ版テトリスは、日本で400万本以上、世界全体で3000万本以上を販売しています。
3000万本というのはゲーム業界歴代4位の売上げとなる輝かしい記録です。
テトリスは既にアーケードで人気を博していましたが、
大ブレイクしたきっかけは、このゲームボーイ版であると言えるでしょう。

 

幻のメガドライブ版テトリス

しかしその影で、テトリスにまつわる苦い経験のあるメーカーが存在します。
それがセガです。

1988年、セガはアーケード版テトリスを発売し、高い人気を得ていました。
セガは翌1989年にアーケード版テトリスをメガドライブに移植すると発表。
メガドライブのキラーソフトになると期待されました。    
しかし、発売予定の1989年4月15日を間近に控えたある日、
メガドライブ版テトリスは急遽発売中止を余儀なくされました。
それどころか、その2ヵ月後にはライバル会社任天堂からゲームボーイ用のテトリスが発売されたのです。
いったい何が起こったというのでしょう?
これにはテトリスにまつわる複雑な権利が絡んでいるのです。

そもそも、テトリスを最初に作ったのは、ソ連の"アレクセイ・パジトノフ"という人物です。
しかし、ソ連は共産主義国家ですから、何かを発明したとしても、権利は個人のものにはなりません。
テトリスの大元の権利を所持していたのは、ソ連の国務機関アカデミーソフトです。
そして、アカデミーソフトからの委託でライセンス業務を担当していたのが、
ELORG(エローグ)という組織です。

アンドロメダソフトという会社がテトリスの面白さに目を付け、エローグからライセンスを獲得します。
しかし、エローグがアンドロメダソフトに許可したのはパソコン用ゲームに限った権利でした。
つまり、家庭用ゲーム機や、アーケード用にテトリスを販売する権利は所持していないということです。
ところがここで、アンドロメダソフトが勝手な行動に出ます。
「どうせ後からライセンスを得れば問題ないだろう」と高を括り、
パソコン向け以外のテトリスの権利までも、サブライセンスという形で他社へ認可したのです。

セガが取得したのも、このサブライセンスでした。
正確に言うと、エローグ→アンドロメダソフト→ミラーソフト→アタリ→テンゲン→セガと、
間にいくつもの会社を挟んだサブサブサブサブライセンスです。
セガとしては、このライセンスで家庭用ゲームでの販売もできるものだと信じきっていたのです。

そんなある日、任天堂はゲームボーイでテトリスを発売するためにエローグにライセンスを申し込みます。
エローグはそこで初めて、自分たちのあずかり知らぬところでテトリスが発売されていたことを知ります。
この事実に任天堂も驚きましたが、すぐさまエローグと交渉し、
家庭用ゲーム機を含んだ関連ライセンスを全て取得します。
激怒したエローグはアンドロメダソフトとの契約を即刻打ち切り、
テトリスに関する全てのライセンスを剥奪してしまいます。
ライセンス所有の大本がその権利を失ったことで、当然ながらセガのライセンスも無効となってしまいました。
よもや、自分がライセンスを受けたのは紛い物であったとは想像もできなかったでしょう。

セガとしては、ライバル会社の任天堂からサブライセンスをもらうわけにもいかず、
メガドライブ版テトリスは凍結せざるを得ませんでした。
既にセガの倉庫には、完成したメガドライブ版テトリスのソフトが山積みされていたのですが、
それらが日の目を見ることはありませんでした。

上記の通り、ゲームボーイ版テトリスは累計3000万本以上を販売している超キラータイトルです。
仮にメガドライブでテトリスが発売されたとしても、これだけ売れはしなかったでしょうが、
メガドライブの普及に大きく貢献していたであろうことは間違いないと思います。
セガにとっては、悔やんでも悔やみきれない失態だったと言えるでしょう。
こういう詰めの甘さは、やっぱりセガなのだなと感じます。

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