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GAME & WATCH

1980年に任天堂が発売した携帯型液晶ゲーム機。
正式名称はGAME & WATCH(ゲームアンドウオッチ)ですが、一般的にはゲームウオッチと呼称されています。

ゲームウオッチ

ハードとソフトが一体となった構造なので、
現在のゲーム機のようにソフトを入れ替えて色々なゲームを楽しむことはできません。
新しいゲームを遊びたい場合は、ゲーム機ごと買わなければならなかったのです。
にも関わらず、国内で1287万台、世界全体では4340万台の大ヒット商品となりました。
このゲームウオッチには、現在の任天堂に繋がるゲームの原点とも言うべき要素がたくさん詰め込まれているのです。

 

横井軍平のアイデア

ゲームウオッチを開発したのは、当時任天堂の開発一部・部長だった"横井軍平"氏です。
ある日、任天堂社長の山内溥氏の運転手が風邪で休んでしまったため、
代わりに横井氏が一日だけ運転手を務めることになりました。
横井氏は車内で山内社長に「小さな電卓のようなゲーム機を作ってはどうか?」と提案したのです。

このアイデアは以前新幹線に乗っていた時に、
車内でサラリーマンが電卓を使って遊んでいたことがヒントになっていました。
当時はウォークマンが発売されたばかりでしたし、もちろん携帯ゲーム機や携帯電話などあるはずもない時代です。
電車内での暇つぶしといえば、せいぜい本や新聞を読むぐらいしかなかったのです。
この状況では、電卓を暇つぶしに使うというのもわからなくはないです。(正直超つまらなさそうですが)
しかし、この提案は横井氏自身もたいして上手くいくとは思ってはいませんでした。
車内で何か会話をしなければと考えた故の、他愛もない雑談のつもりだったのです。

その1週間後、山内社長がシャープの上層部の人間を任天堂に連れて来ました。
そして横井氏に電卓型ゲームを作ることを告げたのです。
横井氏が運転手を務めたその日に行われた会合にシャープの社長も出席しており、
山内社長は、その場で早速電卓型ゲームについての話を持ち掛けていたのです。
その頃は、世の中の電卓需要が下火になっていた時期で、
シャープとしても、自社の電卓用液晶工場を持て余してしまっていたので、
任天堂の提案は正に渡りに船だったのです。

これよりも未来の話になりますが、ゲームボーイやニンテンドーDS、3DSの液晶画面もシャープが担当しており、
ゲームウオッチで生まれた両社の親密な関係が現在までも続いているのです。
(厳密にはゲームウオッチ以前の光線銃からですが)
横井氏も、何気なく提案したゲーム機が、
そのわずか1週間後に開発が始まるとは、全く想像もしていなかったでしょう。
山内社長の判断力と行動力のすごさがうかがい知れます。

 

十字ボタン

ゲームウオッチの液晶画面は単色で、セグメントはキャラクターの表示位置や形状ごとに固定されています。
後に、液晶の前面に別のスクリーンを置いて、カラーで背景等を表現する作品も登場しました。
現在のゲーム機と比べるとあまりにも寂しい性能ですが、当時としては画期的なゲーム機だったのです。

前述の通り、当初はサラリーマンをターゲットとして作られていましたが、
発売後は小中学生に爆発的な人気となったため、途中からターゲットを変更し、
よりゲーム性が重視される作りに変化していったのです。

ゲームウオッチの売上げが好調だった理由のひとつが、時計としても使えるというものでした。
当時はデジタル時計がまだめずらしかった時代です。
「たとえゲームを遊ばなくなったとしても、時計として使えるならば買って損はしないだろう」と考える人が大勢いたのです。
これは、プレイステーション2にDVD再生機能が付いていることと似ているかもしれません。
この時計機能を付けたのも横井氏のアイデアです。

1982年には、マルチスクリーン(2画面)のドンキーコングが発売されました。
当時のゲーム機のコントローラは、丸形のボタンかスティック状のレバーなどがほとんどでしたが、
このドンキーコングでは初めて十字ボタンが採用されました。
コンパクトサイズで、親指だけで簡単に操作できる点が魅力的だった十字ボタンは、
その後のほとんどのゲーム機で用いられるようになった画期的な発明でした。
また、折りたたみ式の2画面ゲーム機という発想は、ニンテンドーDSに受け継がれています。

1983年にファミリーコンピュータが発売されると、急激にゲームウオッチのブームは終息し、
1985年2月に発売された"ブラックジャック"を最後に日本での発売は終了しました。
しかし、海外では1991年10月発売の"マリオジャグラー"まで開発が続けられたのですから、何とも息の長いゲーム機です。

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