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容量削減の創意工夫 その1

近年のゲームソフトは、大容量のものが多くなりました。
プレイステーション3が採用しているBlu-rayディスクは25ギガバイト(1層)もの容量があり、
ゲームメディアの容量不足という問題はほぼなくなりました。

昔のゲームは、それこそ容量との戦いでした。
ファミコンのスーパーマリオブラザーズはわずか40キロバイトでしたし、
ドラゴンクエストでも64キロバイトしかありませんでした。
これは、携帯電話の待ち受け画像1枚分程度の容量でしかありません。
こんなわずかな容量の中に、グラフィックやテキストやサウンドなどが全て詰め込まれていたのです。
そこには一体どんな工夫があったのでしょうか。
ドラゴンクエストを例に検証してみます。

 

文字や画像を極限まで削減

まず、テキストについてです。
ファミコン時代のドラゴンクエストでは、
"がぎぐげご"や"ぱぴぷぺぽ"などの濁点・半濁点文字は、を別の文字扱いしています。
つまり、か゛と表示することで、文字の種類を減らしているのです。

更には、初代ドラゴンクエストでは、カタカナが50音全部は用意されていません。
"イ カ キ コ シ ス タ ト ヘ ホ マ ミ ム メ ラ リ ル レ ロ ン"というよく使う20文字
(実際には、"ヘ"と"リ"はひらがなと共有してごまかしているので、厳密には18文字です)
のみを厳選しており、それ以外の文字をゲーム内で表示することはできないのです。
ちなみにの文字もないので、ゲーム内ではアレフガルド(ゲームの舞台)の名は一切登場しません。
このち(この地)など別の言い回しでやりくりしているのです。
ホイミ・ベギラマ・トヘロスなども、少ない文字数から考え出されたナイスなネーミングに思えますね。

ちなみに、キャラクターのセリフは""で始まりますが、終わりに""はありません。
これで文章が1文字削れるというわけです。
テキスト1文字なんて本当に僅かな容量でしかありませんが、
そういった細かな工夫の積み重ねで、何とか容量を削減していたのです。

 

次にグラフィックについてです。
初代ドラゴンクエストでは、キャラクターは常に正面を向いた状態で、
左右やうしろを向いたグラフィックは存在しません。
歩くときも、ずっと正面を向いたままカニ歩きのように進むのです。
もちろんこれは、キャラクターのグラフィック数を減らすための工夫です。
更に言うと、ラダトームの王様やローラ姫などは、一切のアニメーションをしない完全な一枚画です。

また、モンスターグラフィックも、
形が共有で色だけを変えることで別のモンスターにするという試みがされています。
(まあこれは容量問題がなくなった現在にも受け継がれていることですが)
ボスキャラクターであるりゅうおう以外のモンスターは、全て色違いが存在します。
ちなみにモンスターとは違いますが、主人公のグラフィックも、町の戦士の色違いです。
主人公ですら唯一無二の存在でないというのは、何とも涙ぐましい努力です。

※このページで使用しているゲーム画像は、著作権法の定める引用の範囲であると考えています。
詳しくは、免責事項をご覧下さい。

唯一無二ではない主人公 DRAGON QUEST(C)SQUARE ENIX
(左側の青いキャラが主人公、右側の茶色のキャラは町にいる一般の戦士)

他にも、プログラム上の工夫(どちらかというと制限ですが)もあります。
初期のドラゴンクエストのHP・MPを除いたステータスの上限は255、所持金の上限額は65535ゴールドでした。
随分と中途半端な数字ですが、これはコンピュータが2進数で動いているからです。
2の8乗は256、2の16乗は65536です。
2進数の1桁は1ビット、2進数の8桁は8ビット=1バイトですから、
つまり255という数は1バイトでの最大の数であり、65535は2バイトでの最大の数なのです。
容量は低く抑えつつも、できるだけ大きい数字を扱いたいという中で考えられたのが、 これらの数字だったのです。

 

タイトル画面カット!

様々な容量削減の工夫がされているドラゴンクエストですが、
中でも、ドラゴンクエスト3が最も容量に悩まされた作品だったでしょう。
あらゆる要素を切り詰めて切り詰めて、それでも収まりきらなかったので、
何とタイトル画面をカットしたのです。
はたして、タイトル画面が存在しない作品が他にあるでしょうか?(リアルサウンドは別として)

DRAGON QUEST V(C)SQUARE ENIX
↑DRAGON QUEST Vのロゴが出た後はいきなりこの画面になります。

このように、昔のゲームは厳しい制限の中で、なんとかやりくりをしていたのです。
しかし、容量が少ないからこそ、面白いゲームができていたという側面もあります。
昔はアイデアがたくさんあっても、それを全てゲーム内に詰め込むことは不可能でした。
そこで、できることを限界まで厳選していった結果、本当に面白いものだけがゲームになっていたのです。
たくさんのアイデアを思いついたとしても、その中で本当に面白いものは極僅かなのです。
現在のゲームは容量の心配がなくなったことで、
開発者が思いついたことは全部詰め込んでしまう傾向にあるようです。
そのことが、最近のゲームが面白くなくなってしまった理由ではないでしょうか?
ゲーム開発者の方々は、今一度、昔のゲーム作りを思い出していただきたいものです。

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