空白の17分とは、2004年9月21日にソニーが行った
"PlayStation Business Briefing 2004"の開始時間が17分遅れた事件を指します。
当時のゲーム市場は、ソニー(SCE)のPS2が制覇していました。
任天堂はニンテンドウ64・ゲームキューブと2世代にわたってソニーに破れ、
かつての勢いは失われていました。
携帯機市場こそゲームボーイアドバンスの一強独占状態でしたが、
ソフト売上げはあまり芳しくなく、据え置き市場をカバーできる程ではありませんでした。
そんな中、ソニーはプレイステーションポータブル(以下PSP)で携帯機市場にも参入すると発表したのです。
PSPは、据え置きゲーム機並みの性能を持ち、
更には音楽が聞けたり動画も見れるなどのマルチプレイヤーとしての機能も兼ね備えたハイテクマシンで、
ゲームボーイアドバンスとは比べものにならない程に高性能です。
― 任天堂は据え置きゲーム市場に続いて携帯ゲーム市場までもSCEに奪われてしまう ―
多くのゲームユーザーはそう感じていたことでしょう。
ところが、2003年8月7日、任天堂の経営方針説明会にて岩田社長は謎めいた発表を行います。
「詳しいことは言えませんが異質な商品を開発しています」
この時には異質な商品が何なのかは明らかにされませんでしたが、
これこそが、新型携帯ゲーム機ニンテンドーDS(以下DS)なのでした。
DSの発表に一番驚いたのはソニーだったのではないでしょうか。
任天堂は2001年3月21日にゲームボーイアドバンスを発売し、
2003年2月14日にはマイナーチェンジしたゲームボーイアドバンスSPを発売していました。
『このタイミングならば、任天堂が次世代携帯ゲーム機を発売するのは2〜3年は先だろう。
その間にPSPが携帯ゲーム市場を制圧する…』とソニーは目論んでいたのでしょう。
しかし、その目論みは見事に崩されました。
任天堂の対応は、明らかにソニーが携帯ゲーム市場を奪いにくると予想していたものでした。
2004年9月21日にソニーの発表会(PlayStation Business Briefing 2004)が開催されることになりました。
この日はPSPの発売日と価格が発表されると噂されており、注目が集まっていました。
しかしソニー発表会の開始1時間程前に、
任天堂が急遽DSの発売日(2004年12月2日)と価格(15000円)を公式サイトで発表したのです。
今までソニーは新型ハードの発売日を語呂合わせにしてきました。
プレイステーションの発売日は1994年12月3日(1・2・3)、
プレイステーション2の発売日は2000年<平成12年>3月4日(1・2・3・4)、といった具合です。
当然PSPの発売日も語呂合わせになると予想されており、
2004年12月3日(1・2・3)が有力と見られていました。
しかし、DSが前日の12月2日に発売となると、PSPにも影響がでてくるのは必至です。
任天堂がこの発売日に決定したのも、間違いなくそれを見越しての牽制だったのでしょう。
DSの価格は更にソニーを追い詰めました。
業界関係者達の事前予想では、DSは20000円程度、
PSPは29800円か、あるいはそれ以上の値段になるというのが大半でした。
しかし、DSは15000円という戦略価格を打ち出してきました。
PSPはDSよりもずっと高性能ですが、15000円と29800円では2倍近い価格になってしまいます。
いくらなんでもこの価格差はまずいと、ソニーは思ったでしょう。
ちなみに、DSは発売から1年少しでマイナーチェンジ版のDSLiteを16800円で発売しています。
この早期の投入から察するに、DSの15000円というのは、
逆ザヤ覚悟(とまではいかないにしても)の戦略的価格だったのではないでしょうか?
任天堂は今まで自社の情報を早くから公開していたことで、ソニーに真似され続けてきました。
この時の奇襲は、正に今までのお返しと言わんばかりのものでした。
ソニーの発表会は15時30分開始予定でしたが、実際に始まったのは15時47分からでした。
そして、この日にPSPの発売日と価格は発表されませんでした。
(まあ、元々この日に発表すると公言していたわけではないですが)
しかし、その舞台裏でのソニーの葛藤は想像に難くありません。
その約1ヵ月後の2004年10月27日、ソニーはPSPを2004年12月12日に19800円(税抜き)で発売すると発表しました。
かなりの逆ザヤであったことは容易に想像できます。
この相当に無理をした価格設定のせいで、PSPはかなり長期にわたって赤字を出し続けることとなったのです。
この開始時間の遅れは"空白の17分"と呼称されており、ゲーム業界における重大事件として伝えられています。
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