プレイステーションポータブル(以下PSP)は、ソニーコンピュータエンタテインメント(以下ソニー)が、
2004年12月12日に発売した携帯ゲーム機です。
価格は20790円(税込み)。
ソニーとしては、初めての携帯ゲーム機市場への参入となりました。
ソニーは1994年にプレイステーションを、2000年にはプレイステーション2を発売。
任天堂のニンテンドウ64やゲームキューブを圧倒し、当時の据え置きゲーム市場を制覇していました。
しかし、任天堂もゲームボーイやゲームボーイアドバンスといった 携帯ゲーム市場では圧倒的な強さを発揮しており、
その存在感を見せ付けていました。
そこへ、ソニーは満を持して携帯ゲーム機市場への参入を発表したのです。
PSPのソフトは、UMD(Universal Media Disc)という直径6cmのディスクメディアを採用しており、
1.8ギガバイトもの大容量を有しています。
UMDはゲームだけでなく、オーディオ・ビデオ作品も存在し、映画なども視聴が可能です。
さながら、DVDの携帯版のような存在です。
また、ハード性能もプレイステーション2程ではないにせよ、携帯機とは思えない程に高性能であり、
任天堂のゲームボーイアドバンスとは比べ物になりません。
PSPの発表がされた際、多くのゲームファンはこう思ったことでしょう。
「任天堂は、据え置きゲーム市場のみならず、携帯ゲーム市場までもソニーに奪われてしまう」と。
ところが、これには任天堂も黙ってはいませんでした。
PSPに対抗して、新型携帯ゲーム機ニンテンドーDSを発売します。
ゲームボーイアドバンスが発売されたのは2001年3月21日。
ニンテンドーDSの発売日は2004年12月2日。
実にわずか3年半での新型ハードの発売となりました。
通常、ゲームハードのサイクルは5〜6年程度ですから、
これはかなり異例のタイミングだったと言えるでしょう。
ソニーが携帯ゲーム市場にも参入してくることを見越していた対応だったと感じます。
PSPは、その高性能ぶりから、かなりの高価格となることが予想されていました。
おおよそ29800円、あるいはそれ以上になってもおかしくないという予想もありました。
しかし、PSPの価格と発売日が発表されると噂されていたPlayStation Business Briefing 2004の当日、
任天堂が急遽、自社webサイトにてDSの価格(15000円)と発売日(2004年12月2日)を発表したのです。
この発表には、ソニーも面食らったことでしょう。
PSPの予想価格はこの2倍であり、これではいくら高性能であっても、 多くのユーザーがDSに流れてしまうことでしょう。
結果、ソニーの発表会は17分遅れて開始されました。
そして、この日はPSPの価格と発売日は発表されることはありませんでした。
任天堂の発表を受け、ソニーが改めてPSPの戦略を練り直す必要があったのでしょう。
この発表会の遅れは、空白の17分と呼称され、ゲーム業界の重大事件として歴史に刻まれています。
PSPは、発売直後から一定の人気を得てはいたものの、ライバル機DSの後塵を拝していました。
特に、DSlite発売以降はその差が歴然となり、PSP市場はどんどん縮小していったのでした。
DSは、脳トレをはじめとしたそのハードならではのゲームが多く発売されていましたが、
PSPにはそういったハードならではタイトルがなく、
据え置き機の劣化版のような作品ばかりだったことが、市場が伸び悩んだ理由でした。
そんなPSPを救ったのが、カプコンのモンスターハンターです。
モンスターハンターは、元々プレイステーション2のネットワーク対応ゲームとして発売されていました。
しかし、プレイステーション2をネットに接続するためには、BBユニットという周辺機器が必要であり、
実際にネットワークプレイを楽しんでいたユーザーは極わずかでした。
ところが、PSPにはアドホック通信という近くにいるプレイヤーと無線通信できる機能が備わっています。
この機能は、煩わしいネット接続設定や、月額費用などは必要ありません。
このアドホック通信を利用した、友達との通信プレイが人気を博し、
モンスターハンターは一躍大ヒット作へと上り詰めたのでした。
特に、PSPでの2作目となるモンスターハンターP2は、PSP初のミリオンタイトルとなったのでした。
モンスターハンターの大ヒットで、PSP市場にも多くのソフトが発売されるようになりました。
2011年末までのハード累計販売台数は1800万台以上を記録しており、
これは一定の市場を築くことに成功したと言えるでしょう。
しかし、ライバル機DSは3200万台を超える超特大ヒットとなっており、
それに比べると、PSP市場は実に寂しい限りです。
また、PSPはモンスターハンター以外の大ヒット作が生まれなかったことも、DSに及ばなかった理由でしょう。
特に、海外ではモンスターハンターの人気は低く、また、それに代わるヒット作も存在しないため、
PSP市場は非常に小さなものとなっています。
そもそも、海外ではPSP用の棚が設置されていないというゲームショップも多く、
携帯ゲーム市場は、完全にDSの一強体制が築かれているのです。
結果、PSPはソニーのゲーム機として、初めてトップハードを逃した存在となったのです。
それどころか、後に発売されたプレイステーション3やVitaも、任天堂のWiiや3DSに敗北しており、
現在のソニーゲーム市場は非常に厳しい状況に追い詰められています。
元々は、任天堂を完膚なきまでに叩きのめすために参入した携帯ゲーム機市場でしたが、
結果的には、携帯ゲーム機市場を得るどころか、
据え置きゲーム市場まで任天堂に奪われることになってしまったのは、何とも皮肉なものです。
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